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研究者を続ける3つのヒント

研究者を続ける3つのヒント

東京で行われた若手研究者を対象としたセミナーで話題提供した。

前半は「かわいい」の話,後半は「研究テーマ」の選び方についての話だった。さすがに都会には問題意識の高い学生が多いと感心した。

大学院に入学してから20年が過ぎた。いろいろと人並みに悩んできたので,研究生活を送る上で役立ちそうなことは,できるだけ言語化して,若い人に伝えたいと思う。

進んでアドバイスしてくれる人からは,誰もアドバイスを受けたくない。

I DON'T WANT TO BELONG TO ANY CLUB THAT WILL ACCEPT ME AS A MEMBER.
(自分を会員にしてくれるようなクラブには入りたくない)
by グルーチョ・マルクス

でも,勧めてくれる人がいたのでメモを残しておく。

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一口に研究者といっても,人それぞれである。

出身研究室で大事に育てられバトンを渡された人たちと,自分で住み処を探さなければならない人たちでは,研究者としての歩き方が違う。

私は後者だが,雑草には雑草としての生き方がある。

1. 人と違うことをする

これは雑草研究者には特に大切である。人と同じところに生えても目立たない。勝負するなら,小さくても自分の土俵を自分で作って,そこで一番になることだ(アスファルトの隙間から芽を出すとか)。負けそうになったら,新しい土俵を作ればいい。「鶏口牛後」の意気込みは雑草研究者には欠かせない。なぜ一番でないといけないか。二番手以降は知名度がずっと下がるからである。

2. 誰かを喜ばせる

誰かを喜ばせることを目指した方がいい。日本語の「いらっしゃいませ」に対応する英語に「How can I help you?」がある。このようなサービス精神は大切だ。よく「役に立つ研究をしたい」という学生がいるが,役に立つかどうかは相手が決めることだ。私たちにできることは,具体的な相手がどうやったら喜んでくれるかを誠実に考えることだ。

3. 他人を批判しない

研究者はたいていは賢いので,他人の間違いやあらがよく見えてしまう。また,正しいことを主張するのが役割だと思っているので,ずばりと核心をついたことを言ってしまう。しかし,局所解が最適解とはかぎらない。言わない方がよいことも多い。

大事なのは,3つの関連性だ。1と2はセットになっている。人と違っていても喜ぶ人がいなければ,無視されるか叩かれる。誰かが喜んでくれてもやっていることが月並みだったら,研究者としてはそれまでだ。3はなくてもいいが,あったほうがスムーズに物事がすすむ。

それぞれに関連する推薦書も紹介した。

1. デイル・ドーテン (2001). 仕事は楽しいかね? きこ書房 原著1996年

「問題は,才能のあるなしでもなければ,勤勉かどうかってことでもない。コイン投げの達人じゃないってことなんだ。」

同じ著者が何冊か続編を書いているが,最初の本がいちばん面白かった。特に,若い人(大学院生)が読んだらいい。訳もこなれていて,まれにみる秀作である。新しいことに挑戦しつづける元気が湧いてくる。

この本の改訂版は,Kindle版として入手できる(2011年)。
Experiments Never Fail: A Guide for the Bored, Unappreciated and Underpaid

他の本では,他者との関係の重要性がより強調されている。

デイル・ドーテン (2002). 仕事は楽しいかね? 2 きこ書房 原著1999年
デイル・ドーテン (2012). 仕事は楽しいかね?《最終講義》 きこ書房 原著2006年
デイル・ドーテン (2005). 仕事にちょっとつまずいたあなたへ 学習研究社 日本で初版

著者のウェブサイトは http://www.Dauten.com

2. ピーター・F・ドラッカー (2003). 仕事の哲学 (ドラッカー名言集) ダイヤモンド社

「成果をあげるには,人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。」

しばらく前にドラッカーがブームになったが,彼の考え方は研究にも役に立つ。名言・警句を集めたこの本が一番読みやすい。強みに集中すれば,弱みは気にしなくてもいいと言い切ってもらえると,気持ちが楽になる。

研究関連では,

ピーター・F・ドラッカー (2007). イノベーションと企業家精神 ダイヤモンド社 原著1985年
ピーター・F・ドラッカー (2007). 非営利組織の経営 ダイヤモンド社 原著1990年

も勉強になる。

3. デール・カーネギー (1999). 人を動かす 新装版 創元社 原著初版1937年

「他人に恨まれたいのであれば,人を辛辣に批評さえしてさえいればよい。その批評が当たっているほど効果はてきめんだ。」

この本は以前にも紹介した。大学生のときにも読んだが,挫折した。良い本だが,読む時期を選ぶと思う。自分が精神的に疲れているときは読めない。

以上,3つのヒントは「仕事(成果)を中心に考える」という言葉でまとめることができる。

私にとって研究を進めるエネルギーになるのは,「自分が新しい発見をしたい」という達成動機である。それがあるから,いつでも仕事のことを考えていられる。

しかし,自分が有名になりたい/目立ちたいという気持ちがあまり強くなると,妬みが生まれ,誰かの足をひっぱりたくなる。

そのようなネガティブな感情に対する処方箋は,「仕事(成果)中心で考える」ということのようだ。そうすれば,他人を(正確には,他人が目指していることを)応援できるようになるし,他人が自分と違うやり方をするのも許せるようになる。

研究は孤独な営みだから,「面白いですね」とか「大事な研究ですね」とか言ってもらうと,(特にそれなりに分かった人から声をかけてもらうと)とてもうれしい。

仕事(成果)を中心に考え,励ます人になりたいと思う。

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