ハレの日はおしまい

27日の朝に公開された「かわいいものを見ると注意の範囲が狭くなる」という論文について,とても多くの反響をいただいた。

25日午前10時のプレスリリース以降,いち早く取材にきてくださった新聞社やテレビ局の方々に心から感謝する。

おかげで,朝日新聞・共同通信・産経新聞・日刊ゲンダイ・毎日新聞・読売新聞(五十音順),NHK「おはようひろしま」,NHK全国版ニュース,NHK「NEWS WEB 24」,フジテレビ「スーパーニュース」,テレビ朝日,大阪読売テレビ,名古屋CBCラジオ等で,興味をもって取り上げていただいた。

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1つの研究を紹介するにしては,すでに十分すぎるほどである。この論文に関しては,報道された以上の新しい情報を提供できない。大きな感謝をもって,本件に関するマスコミの取材を今日以降は辞退したい。

「かわいい」の研究はまだ始まったばかりである。過大な一般化を避けるために,もっと研究を重ねることが必要だ。驚くような研究結果が,その後追試できなかった例は過去にたくさんある。

研究者にとって脚光をあびるハレの日は1日でよい。お祭りは終わりにして,日常の地味な作業に戻りたい。またいつか「かわいい」の研究でプレスリリースを出して,世間をわくわくさせられる日がくるのを楽しみにしている。

もちろん,研究上の問い合わせや前向きなアイデアは引き続き歓迎している。

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研究報道について,気になった点が1つあるので,補足する。

実験1で成績が44%向上したという数字だけが独り歩きしている。これは,個人ごとに,(写真を見る後の成績/写真を見る前の成績)×100-100という式で計算した値を平均したものである。その範囲は -18%(11点→9点)から160%(5点→13点)と幅広い。マイナスの値があるということは,かわいい写真を見ることで成績が下がった人もいるということだ。平均値を使って向上率を計算すると 34% である(成体動物群は9%)。

実験1-3を通じて,幼い動物の写真を見ることの効果は一貫して統計的に有意である。しかし,それは「誰にでもいつでも」当てはまるという意味ではなく,たくさんの人を平均したらそうなったという意味である。

数字が独り歩きすると誤解が生じる。かわいい写真を見ることに効果があることは,先行研究の知見から考えても,十分にありうる。しかし,それが「かわいい」に特異的な効果なのか,効果の大きさはどの程度であるかなどを見極めるには,今後さらなる検討が必要である。

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