記録的な就職難といわれるが,就職したからといって安泰とはかぎらないらしい。
次の本を読んで,暗い気持ちになった。
増田不三雄 (2010). 社内失業-企業に捨てられた正社員 双葉新書
社内失業とは,正社員であっても職場でまともに仕事が与えられない人たちをさす。
「楽ができてうらやましい」という評価は見当ちがいだと著者はいう。
仕事がないということはスキルを向上させるチャンスがないということで,その人のためにも会社のためにもならない。
「事なかれ主義」や「縦割り」といった古い体質や,中堅層のプレイングマネージャー化(部下の管理をしながら自分も現役として成果をあげることを求められる)などが原因らしい。
ダメな上司の例がたくさん出てきて,イヤな気分になった。
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しかし,もっと本質的な問題は,仕事が減ってきているということだ。
この本に引用されていた資料(2009年度経済財政白書)によると,企業内で余っている人員(雇用保蔵というらしい)の推定は600万人を超えているという(p. 127)。
日本の労働人口(6000万人)の1割が「いらない人」になっている。
これでは新規採用を控えるのも無理はない。
グローバル化が進むと,単純な仕事なら海外に回した方が圧倒的にコストが安い。
頭脳労働と思われることでも,グローバル化が進んでいるのを実感する。たとえば,300語程度の英文アブストラクトを日本で校閲に出したら4000円くらいかかるが,海外に出せばその1-2割ですむ。しかも速い。
さらに,競争相手は外国だけでない。これまで人がやってきた仕事はますますコンピュータが代行するようになるだろう。
WIRED で取り上げられたこんな記事を読むと,SFの世界がすぐそこにきていると実感する。
「物理法則を自力で発見」した人工知能(2009年4月15日)
人間の「クイズ王」と対戦,IBMの『Watson』(動画) (2010年1月14日)
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仕事の総量が減っている。
授業の成績がよければいいとか,TOEICの点数が高ければいいといった,高校までの価値観(上限のある目標に向かって努力して近づくことを善とする)は,以前ほど重視されなくなるはずだ。
この現実を大学できちんと教えないといけない。