大学院生に望むこと

昨日に引き続き,ポスドクに関する本を紹介する。

菊地 俊郎 (2010). 院生・ポスドクのための研究人生サバイバルガイド 講談社ブルーバック

この本は,ポスドク問題を社会としてどう解決するかではなく,個人の問題としてどう対処するかに焦点を当てている。研究費の申請方法やアイデアの育て方,特許を取る意味などが書かれている。

この本を読んで刺激を受け,実行に移すのはどんな人たちだろうか。大学院生・ポスドクの上位1-3割くらいの気がする。そういう人たちはおそらく何も言われなくても,自分で道を切り拓いていくだろう。

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日本における科学の未来が危ないという言説があるが,私は不思議と悲観していない。巨視的には,我々は困難と競争のなかで何か解決策を見つけだすだろう。

石油が枯渇するという心配はずっと昔からあるが,まだしばらくは大丈夫そうだ。経済学では「代替効果」というのが知られているらしい。ある資源が稀少となり,価格が上がりすぎると,人々は潤沢に供給できる代替品を見つけようとするとので,稀少な資源の需要が減るという(以下の本の pp. 67-69)。人間の創意工夫の才は,物事が完全にダメになってしまう前に,イノベーションによって新しい道を切り拓くのだ。

クリス・アンダーソン (2009). フリー:〈無料〉からお金を生みだす新戦略 NHK出版

このように,日本の科学も巨視的にはうまくいくと信じている。しかし,それは科学に携わるすべての人が幸せになるという意味ではない。「一将功成りて万骨枯る」の言葉のように,多数の犠牲の上に一握りの人が成功を得ることもあるだろう。それでも「日本の将来」という大局的視点からは,結果オーライなのかもしれない。

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大学院に進む人は,どうか早いうちから自衛のために自分の「強み」を磨いてほしい。強みには,研究能力だけでなく,人柄やコミュニケーション能力などもある。総合的にみて,研究の世界で勝算があるかどうかを冷静に判断してほしい。

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