学会でも大学でも,プレゼンテーションのためのソフトウェア(パワーポイントやキーノート)を使った発表を聞くことが多い。
感動するくらいに美しく,そして楽しいプレゼンに出会うこともある。
2007年のHCI国際会議における金出武雄先生(カーネギーメロン大)の基調講演や 2009年の心理生理学会(SPR)におけるJohn Allen先生(アリゾナ大)の会長講演を聞いたときには,文字どおり身体が震えた。いまは YouTube などでいろいろな人のプレゼンを見ることができる。
しかし,そういうケースはごくまれで,たいていは,どんぐりの背くらべのような,代わり映えのしない電子紙芝居になってしまう。
あえて使わないという選択肢もある。明るいところで聴衆をしっかり見ながら,身振り手振りで話すと,かなりの臨場感が出る。
とはいえ,データを見て楽しんでもらうためには,スライドは欠かせないツールである。
スライド作りに関して,以前,
ガー・レイノルズ (2009). プレゼンテーション Zen ピアソン桐原
を読んで衝撃を受けた。文字を極限まで減らし,写真やイラストに語らせるという手法である。
写真は高解像度のものだけを使い,フチなしで全画面表示する。このテクニックはとても効果的である。
数年前,この手法でスライドを作って,学生向けに学科(プログラム)紹介をしたら,けっこうな手応えがあった。
スライドに頼らないので,聴衆の顔や反応をじっくり見ることができ,うまくいけば官能的ともいえる効果を上げられる。
次の本でも,そのような手法を推奨している。
カーマイン・ガロ (2010). スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン 日経BP社
しかし,こういった方法は,ビジネスの場面では格好いいが,ふつうの学会発表には向かないように感じる。
具体的な情報を提供するための古典的なスライド作りを学ぼうと,次の本を読んでみた。
平林 純 (2009). 論理的にプレゼンする技術 サイエンス・アイ新書
特に,第1章と第2章に書かれた心がまえの説明が秀逸。内容とマッチしたイラストもよい。パワーポイントの使い方は少し趣味が違ったが,発表するときに,両腕を垂らさず両肩の高さで保つというアドバイスは参考になった。
宮野 公樹 (2009). 学生・研究者のための PowerPointスライドデザイン 化学同人
スライドの添削過程を見ることができる本。好みはあるかもしれないが,意外なデザインのヒントが見つかり,勉強になった。
プレゼンはうまくなりたいものだ。
しかし,優れたプレゼンは,スキルだけでなく,人を楽しませたいという「サービス精神」が鍵になると思う。