スティーヴン・プレスフィールド (2002/2008). やりとげる力 筑摩書房
を読んだ。著者はアメリカの作家・脚本家。
ものごとを始めよう,続けようとしても,くじけてしまうことがよくある。
自分のさらなる成長を妨げるさまざまな要素を,著者は「レジスタンス」とよぶ。
レジスタンスは自分の内部から生じ,抜け目なく,無慈悲で,手加減しない。ときには論理で迫ってくる。そんなことをするのはあなたの仕事ではないとか,もっと他にしなければならないことがあるとか。・・・たしかに身に覚えがある。
このレジスタンスに打ち克てるかどうかが,プロとアマの違いだと著者はいう。
ある人がサマセット・モームに尋ねた。常にスケジュールを守って原稿を書くのか,それとも,書くのはインスピレーションがひらめいたときだけか。「書くのはインスピレーションがひらめいたときだけです」モームは答えた。「そして幸いにも,ひらめきは毎朝9時ぴったりに訪れてくれます」 プロであるとは,こういうことだ。(p. 93)
心理学者の Paul J. Silvia は「どうやってたくさん書くか(How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing)」という小冊子を書いた。答えは,書く時間を増やすこと,そして執筆を行う時間帯をあらかじめスケジュールしておくことである。
作曲家の久石譲も「感動をつくれますか?」(角川書店, 2006年)のなかで,似たようなことを書いていた。ポール・オ-スターも然り(「わがタイプライターの物語」(新潮社, 2005年)のなかだったか)。SF作家のアイザック・アシモフが,規則正しい生活を続けながら,たくさんの本を出版していったのは有名な話だ。1冊仕上げるのにかかる時間がだんだん短くなったという逸話が学習心理学の教科書に書いてある(Learning and Memory: An Integrated Approach)。
プロは仕事を愛するが,生み出した作品と自分自身は別物であることを忘れないという。だから,作品の評価に一喜一憂せず,次の作品に取り組む。
研究も同じことで,作品の評価が高かろうが低かろうが,習慣として研究活動を続けられる人をプロとよぶのだろう。