「かわいい」の心理学
- 夢ナビライブでの30分ミニ講義が視聴できます。(2019年7月24日)
- 本が出版されました。「かわいい」のちから ―実験で探るその心理― 化学同人 (2019年6月1日)
- アジア心理学・行動科学会議(ACP2017)での英語講義が視聴できます。(2017年3月23日)
新着情報
- 愛犬情報誌 Wan 2025年1月号に柴犬の「かわいい」の解説記事が掲載されました。(2024年12月13日)
- 滋賀大学経済経営研究所先端セミナーで「かわいい」の講演をしました。(2024年11月14日)
- 愛知学院大学心理学会(心理学部)で「かわいい」の講演をしました。(2024年11月12日)
- FASHION TECH NEWS に「かわいい」の記事が掲載されました。(2024年11月4日)
- NHK総合「チコちゃんに叱られる!」で「かわいい」の解説をしました (25日(金) 19:57〜20:42,再放送 26日(土) 9:00〜9:45;関西は26日のみ)。(2024年10月25日)
- 千葉市生涯学習センター(生涯学習アカデミーちば)で「かわいい」の講演をしました。(2024年9月18日)
- 週刊新潮(令和6年8月15・22日号)の記事「だから『殺処分』はなくならない」にコメントが掲載されました。(2024年8月8日)
- テレビ朝日グッド!モーニングでクマ注意チラシの「かわいさ」に関するコメントが放映されました。(2024年7月10日)
- 「幼児顔は接近反応を引き起こす」という論文が Japanese Psychological Research で早期公開されました。(2024年4月2日)
- 「かわいさに注目すると幼児顔に対する笑顔反応が増える」という論文が Japanese Psychological Research で早期公開されました。(2024年3月27日)
- 「かわいい」の複合語の歴史を調べた紀要論文が公開されました(2022年11月に発表したプレプリントの改訂版)。(2024年3月22日)
- テレビ東京「探求の階段」で「かわいい」の科学 (23:08~23:16) が取り上げられます。(2024年3月14日,再放送:BSテレ東 3月23日23:20~23:25)
- 国立台湾大学理学院との部局間協定締結調印式において「The psychology of “kawaii” and beyond: Introduction to the Cognitive Psychophysiology Laboratory at Osaka University」というトークをしました。(2024年3月8日)
- NHK総合「あしたが変わるトリセツショー」(19:57~20:45) の動物園の回でインタビューが放映されました(取扱説明書)。(2024年3月7日)
- 読売新聞(関西版・科学面)の記事「赤ちゃん『かわいい』生存戦略」で研究が紹介されました。(2023年11月3日)
- 「1人よりも2人でいるほうがかわいく見える」というロボットについての論文が PLOS ONE に掲載されました。[プレスリリース][QLifePro][TECH+][ナゾロジー](2023年10月18日)
- 第64回日本母性衛生学会学術大会(大阪国際会議場)で「『かわいい』の科学」という教育講演をしました。
- 「赤ちゃんのかわいさは逆さになっても分かる」という論文がPerceptionの早期公開版に掲載されました(原稿はこちら)。(2023年9月4日)
- ネットマガジン「水曜日のハンズさん」で,ぬいぐるみと「かわいい」の関係についてのインタビューを記事にしていただきました。(2023年8月16日)
- NHK大阪の記事「ネコの魅力を科学する!」でコメントが紹介されました。(2023年6月11日)
- 著書「『かわいい』のちからー実験で探るその心理」の第2刷を出していただきました。(2023年6月10日)
- 菅公学生服株式会社による解説記事『現代における「制服のかわいさ」の価値と可能性』が「繊維製品消費科学」誌で公刊されました。(2023年4月25日)
- 「パンダはなぜかわいい?」について NHK総合「首都圏ネットワーク」(18:10~18:30)で解説しました。(2023年2月20日)
- 「なぜ日本人はパンダ好き?」について「ABEMA的ニュースショー」でコメントしました(Yahoo!での記事)。(2023年2月19日)
- 日本語の「かわいい」に相当するスペイン語と英語について調べた論文がSAGE Openに掲載されました。(2023年2月11日)
- 新著「見るだけで心が整うかわいい動物の写真」(アスコム)が発売されました。(2023年1月18日)
- 子どものかわいさは見た目だけでなくその子の性格情報によっても変わるという論文がPLOS ONEに掲載されました(阪大サイトでの解説,京大のプレスリリース)。(2023年1月18日)
- 新著「見るだけで心が整うかわいい動物の写真」(アスコム)の予約注文が始まりました。(2022年12月21日)
- 「かわいい」の複合語の歴史を調べたプレプリントが公開されました。(2022年11月2日)
- 音楽の不規則性とERPについての大学院生の論文が European Journal of Neuroscience で公開されました。(2022年10月30日)
- 日本衣服学会第73回年次大会で「『かわいい』と衣服:実験心理学の視点から」という特別講演(オンライン)を行いました(登録制,一般聴講無料)。(2022年10月29日)
- エモテク座談会で「実験心理学で迫る!「かわいい」のちから」という話題提供をしました。(2022年10月25日,Youtube,note)※リンクが切れています
- Affective Computing & Intelligent Interaction(ACII 2022)のワークショップ「Cultural-originated Affect」で基調講演(英語,オンライン)をしました。(2022年10月18日)
- 関西テレビ『報道ランナー』で「かわいい」の効果についてのコメントが放映されました(YouTubeに転載)。(2022年10月13日)
- 追手門学院大学心理学部で「かわいいの心理学」のオンライン講演を行いました。(2022年10月12日)
- 東海学園大学心理学部で「かわいいの心理学」のオンライン講演を行いました。(2022年10月5日)
- 大阪大学情報科学研究科第7回ネットワーキングイベントで「『かわいい』の心理学:基礎から応用へ」のトークをしました。(2022年8月22日)
- 菅公学生服「かわいい制服研究室」の第2弾サイトが公開されました。(2022年6月22日)
- 愛犬情報誌 RETRIEVER 2022年7月号に「かわいい」の監修記事が掲載されました。(2022年6月14日)
- 富田林市立中央公民館でワークショップをしました(「かわいい」の世界へようこそ~「かわいい」のしくみと「かわいい」のちからとは~)。(2022年6月11日)
- 愛犬情報誌 Wan 2022年5月号にチワワの「かわいい」の解説記事が掲載されました。(2022年4月14日)
- ヒューマンーロボットーインタラクション国際会議(HRI2022)で「かわいい」の基調講演を行いました。(2022年3月10日)
- 「日本版かわいい乳児顔(JCIF)データセット」の論文が Frontiers in Psychology に掲載されました。(2022年2月18日) [プレスリリース][朝日新聞での紹介][Gigazineでの紹介]
- 週刊朝日 2022年1月21日号のパンダ特集にコメントが掲載されました。(2022年1月11日)
- 読売新聞の「幸せを作る。」特集にコメントが掲載されました。(2022年1月3日)
- 朝日新聞デジタル版に猫のかわいさについてのコメントが掲載されました。(2022年1月2日)
- Business Insider Japan に「かわいい」のインタビュー記事が掲載されました。(2022年1月1日)
- NHK近畿の番組『パンダってナンダ!?~赤ちゃんパンダ・楓浜が教えてくれた“かわいい”の秘密~』で「かわいい」の解説をしました(2021年12月9日)。2021年12月31日10:05~10:51にNHK総合で全国放送されます。1月22日(土)午前10:05~10:50に近畿ブロックで再々放送されます。
- 雑誌 Numéro Tokyo (ヌメロ・トウキョウ)の掲載記事がネット版で公開されました。(2021年8月5日)
- FRIDAYデジタルに「かわいい」のインタビュー記事が掲載されました。(2021年7月14日)
- 雑誌 道徳と特別活動 2021年7月号のコラムに「『かわいい』と素直に感じられますか」(今,君たちに伝えたいこと) を寄稿しました。(2021年6月18日)
- 雑誌 Numéro Tokyo (ヌメロ・トウキョウ)2021年7-8月号に「科学でひもとく『かわいい』の世界」というインタビュー記事が掲載されました。(2021年5月28日)
- まいどなニュースで「かわいい制服」についてのインタビュー記事が公開されました(Yahoo!ニュース)。(2021年4月23日)
- 「スヌーピーがなぜ日本で人気があるか」について米国のPodcastに取材協力しました。(2021年4月6日)
- 科研費の基盤研究(A)「『かわいい』感情の効用とその実社会応用に関する研究」(2021~2025年度)が採択されました。(2021年4月5日)
- 菅公学生服「かわいい制服研究室」のサイトが公開されました。YouTube動画はこちら。(2021年2月24日)
- 上田彩子先生(理化学研究所)の手による「漫画版の書評」が『基礎心理学研究』に掲載されました。(2020年11月18日)
- 「『かわいい』ってなんだろう:実験心理学の研究で分かったこと」の記事がニッポンドットコムに掲載されました。(2019年10月7日)
- 本の刊行記念トークイベントが東京・渋谷で開催されました [チラシはこちら]。(2019年7月4日)
- 新しい本が出版されました。世界で初めての科学的な「かわいい」論です。(2019年6月1日)
入戸野 宏 (2019). 「かわいい」のちから ―実験で探るその心理― 化学同人 (DOJIN選書)
※参考文献リスト(リンク付き)はこちら
- Eテレ「又吉直樹のヘウレーカ!」で「“かわいい”ってどういうこと?」の回に出演しました(2019年4月17日夜10時,再放送は4月19日木曜深夜)。
- Eテレ「すイエんサー」の「カワイイ似顔絵をかきたーい!」の回でコメントが紹介されました(2019年4月16日夜7時45分)。
- 科研費「かわいいと感じることが心理生理状態と社会的関係に与える効果」の研究会を,大阪大学人間科学研究科で開催しました (2019年2月28日)。
- ヴィレッジバンガードのVVmagazine Vol. 56 (2019年3月号) に「かわいい」のインタビュー記事が掲載されました (p. 8)(2019年2月25日)。
- 台湾の国立交通大学で「かわいい」についての小講演(Recent advances in the psychology of kawaii and cuteness)をしました (2018年11月1日)。
- 日本心理学会第82回大会の公開シンポジウムで「魅力・かわいい・化粧」という話題提供をしました (2018年9月25日)。
- 第50回大阪大学公開講座で「『かわいい』って何?-人はなぜ『かわいい』に惹かれるのか-」という講演をしました (2018年9月18日)。
- イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学で「かわいい」についての小講演(Beyond cuteness: A recent advance in the psychology of “kawaii”)をしました (2018年9月10日)。
- 夢ナビライブ2018名古屋で「『かわいい』の感情を科学する」(30分講義) を行いました (2018年7月28日)。
- 新R25で「かわいい」の研究が紹介されました (2018年7月19日)。
- リーガクラブ(リーガロイヤルホテル大阪)で「『かわいい』で人生を豊かにする」という講演をします(2018年6月21日)。
- AERA 2018年5月14日増大号に,「かわいい」についてのコメントが紹介されました。「かわいいとは,作るものでも作られるものでもなく,発見するものです。」(2018年5月7日)。
- Handai-Asahi中之島塾で『「かわいい」の科学~実験心理学で探る心の世界』という講演をしました。(2018年4月14日)
- 科研費「かわいいと感じることが心理生理状態と社会的関係に与える効果」の研究会を,大阪大学人間科学研究科で開催しました (2018年3月1日)。
- 宝島社「見るだけで幸せになる 『ブランケットキャッツ』」にインタビュー記事が掲載されました (pp. 92-95) (2017年12月21日)。
- NHK Eテレ『テストの花道 ニューベンゼミ』で「かわいい」の研究が少しだけ紹介されました (2017年11月20日)。
- 『月刊Pumpkin 2017年 10 月号』に「かわいい」の記事が掲載されました(2017年9月20日)。
- ベビースキーマに関連するかわいい写真と関連しないかわいい写真に対する心理生理反応の違いを調べた論文が SAGE Open にアクセプトされました(2017年4月19日)。
- 科学研究費補助金 (基盤研究(B)) に「かわいいと感じることが心理生理状態と社会的関係に与える効果」が採択されました。ようやく新しい研究がスタートできそうです(2017年4月1日)。
- RCCテレビ(中国放送)「Eタウン SPORTS」(16:54~17:24)で「カワいいモノ研究会」が紹介され,インタビューが放映されました(2017年3月25日)。
- The Asian Conference on Psychology & the Behavioral Sciences 2017 で「Beyond Cuteness: An Emerging Field of the Psychology of “Kawaii” 」という基調講演をしました(神戸)(2017年3月23日)。
- National Geographicのブログ「なぜ”みにくい”動物をかわいいと感じるか (This is why we find ‘ugly’ animals cute)」で「キモかわいい (kimo kawaii)」についてのコメントが紹介されました(2017年3月18日)。
- 第83回東京インターナショナル・ギフト・ショー LIFE x DESIGN (東京ビックサイト) に「カワいいモノ研究会」が出展しました(2017年2月1-3日)
。 - フランスで開催された MAISON&OBJET PARISに「カワいいモノ研究会」が出展しました。(2017年1月20-24日)
- 夢ナビライブの講義が【オンライン】で視聴できるようになりました(2016年9月20日)。
- 「かわいい」に関する総説(英語)がオープンアクセス論文として公開されました(2016年4月28日)。
- Bloomberg Businessのコラム記事に「かわいい」効果についてのコメントが掲載されました(2016年3月3日)。
- 「カワいいモノ研究会」の活動が,広島ホームテレビの「HOME Jステーション」で紹介されました(2016年2月2日(火)18:15~)。今年も第81回東京インターナショナルギフトショーに出展しました(2月3~5日)。
- NHK BSプレミアムの特番「ネコもワンコも大集合 年末はこれでモフモフ!スペシャル」でコメントが紹介されました。(2015年12月30日(水)19:30~21:00,再放送2016年1月9日(土)13:30〜15:00)
- 広島県東部工業技術センターで「モノづくりやサービスに活かせる”かわいい”研究最前線」という講演をしました。(2015年10月30日)
- R&D支援センターのセミナー「『かわいい』と感じるメカニズム-モノづくりやサービスに活かすヒント-」を開催しました。(2015年10月27日)
- National Geographicのブログ「かわいいものをみるとなぜ抱きしめたくなるか(When we see something cute, why do we want to squeeze it?)」でコメントが紹介されました(日本語版)。(2015年10月13日)
- NHK BSプレミアム「仮説コレクターZ」で「かわいい」の研究を取り上げていただきました。(2015年8月27日)
- 長岡技術科学大学の「Kawaii理科プロジェクト」で講演しました。(2015年7月14日)
- 「カワいいモノ」ブランドデザインセミナーを西日本4都市で開催しました。開催日は,広島(2015年5月27日),大阪(5月29日),高松(6月2日),福岡(6月9日)です 。参加は無料です。
- Spotlight (サイバーエージェント社) の記事で紹介されました。(2015年5月21日)
「期末試験はワンちゃんまみれでストレス解消!英国大学生を救うのは広島大の『かわいい研究』だった」 - NHK Eテレ『サイエンスZERO』 で「かわいい」の研究が紹介されました。(2015年5月24日夜11:30~12:00,再放送 2015年5月30日昼12:30~13:00)
- 東京インターナショナルギフトショーに「カワいいもの研究会」が出展しました(東京)。 (2015年2月4-6日)。
- 「かわいい」についての英語レビュー論文(East Asian Journal of Popular Culture 2016年掲載予定)の原稿を掲載しました (2015年1月17日)。
- 日本建築学会「可愛い」を求める心と空間のあり方に関する研究WG の「けい・きゅーぶ」2015年冬号にインタビュー記事が掲載されました(2015年1月14日)。
- “カワいいもの”についてのインタビューがNHK広島の「お好みワイドひろしま」で放映されました(2014年11月18日)。
- フィンランドの新聞Helsingin Sanomatに「毛のある動物はなぜかわいいか」というインタビューが掲載されました (2014年9月26日)。
- 産経新聞の記事「動物テーマ 写真集人気」にコメントが掲載されました (2014年9月3日)。
- 「”カワいいモノ”ブランドデザイン戦略事業」(中国経済産業局)の一環として,中国地方4県で講演をします(島根7月8日,岡山7月15日,広島7月23日,鳥取7月29日)。詳しくはこちら。(2014年6月30日)
- 日経MJ (流通新聞) の記事「尻尾巻くかわいさ:無防備な動物のおしり」にコメントが掲載されました (2014年6月23日)。
- PLoS ONE論文の裏話がオンラインジャーナル誌(The Winnower)に掲載されました (2014年5月27日)。
- 第32回日本生理心理学会大会で「”かわいい”の心理生理学」という小講演をしました (2014年5月18日)。
- 月刊誌 BIGtomorrow 2014年3月号の「頭がよくなるすごい習慣」で紹介されました(2014年1月28日)。
- 広島大学のセミナー で『「かわいい」の心理学:産業・工学応用の視点から』という講演をしました(2013年12月10日)。
- NHK総合テレビ「サキどり↑」で取り上げられました(2013年11月10日)。
- FMラジオ局 J-WAVE「ラジペディア」でインタビューが放送されました (2013年10月24日)
- 第5回国際デザイン学会連合国際会議(IASDR2013)のパネルディスカッション”Kawaii as an aesthetic for product and system design”で”Kawaii as an Emotion: A Theoretical Framework of Kawaii Design“という話題提供をしました(2013年8月30日)。
- VISION誌への寄稿「かわいさと幼さ : ベビースキーマをめぐる批判的考察」を機関リポジトリで公開しました (2013年5月21日)。
- 『夢ナビ』(株式会社フロムページ発行)で紹介されました (2013年4月22日)。○世界が注目する日本の「かわいい」の本質に迫る○子どもはなぜかわいいの?
- 『所さんの目がテン!』(日本テレビ)で紹介されました(2013年4月21日)。
- 広島大学ホームページ『研究NOW』で紹介されました。
- PLoS ONE論文 (2012年9月26日公開) は70以上の海外メディアで紹介されました (Media Coverage) 。
- 依頼されて書いた解説記事もあります。The Conversation (October 5, 2012), Adapt International Bulletin (No. 32/2012, PDF 340KB)
- 2200万の文献を含む医学・生命科学系データベース PubMed で, 「かわいい (kawaii) 」をタイトルに含む最初の論文になりました。
1. 「かわいい」とは何だろう?
ふだんの生活の中で, 「かわいい」という言葉をよく耳にします。また, 私たちの身の回りには, かわいいものがあふれています。なぜでしょう?
「かわいい」について論じた書物は, これまでにも数多くあります。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
このほかに, 関連する文化論や雑誌記事をあわせると相当な数になります。
しかし, これらの本を読んでも, 結局のところ「かわいい」とは何なのか, よく分かりませんでした。
「『カワイイ』にはもはや定義は要らない」 (櫻井, 2009, p. 185) とまでいわれると, どうも納得がいきません。ビジネスとしてはそれでいいのかもしれませんが, 学問としてはうまくいきません。
【補足1】ここに挙げた文献の刊行年を見て分かるのは, 「かわいい」に対する関心は周期的に高まるということです。このごろ「かわいい」が流行っていますが (外務省のポップカルチャー発信使 (2009年2月26日-2010年3月31日) やNHKの番組(2013年3月23日最終回)), それは目新しいものでありません。直近では, 1990年代前半に盛んに議論されていたことが分かります。
【補足2】なぜ, 「かわいさ」ではなく, 「かわいい」の研究なのかというと, 後述するように, 「かわいい」は, 感情を表わす形容詞として考えた方が, 語史の上でも現代用法の上でも, 合理的だからです。「かわいさ」というと, そういったものがどこかに実在するような感じがしますが, おそらく違います。同じものを見ても, かわいいと思うときも思わないときもあります。「かわいい」という語が, 対象の性質を表わす属性形容詞として使われるようになったのは, 近世以降です。これに対して, 「かわいい」の英語版としてよく使われる cute は, acuteの頭音消失異形であり, 属性形容詞が元になっているようです。このあたりに, かわいいと cute のニュアンスの違いがあるのかもしれません。
2. どうしたら「かわいい」を理解できるのか?
「なぜ分かった気がしないか」
文献を読んでいくうちに, その原因が何となく分かりました。私の思考スタイルが, これらの本の構成と少し違っていたようなのです。
まず, これまでの著書では, たいてい文化論が語られるか, 質的・感性的な表現が多用されていました。実証的なデータ (少なくとも, 読者が手続きや結果を再現できそうなデータ) はほとんど見かけません。また, 概して先行研究の調査が不十分であり, 記載したアイデアのどこが新しいのかをはっきり示していません。このような特徴は, 科学の営みに慣れていた私にはもの足りないものでした。
私はファッションや若者文化に疎く, それほど関心もありません。ファッションは時代や集団によって変化します。私としては, そのような「動く標的」ではなく, もっと手堅いもの (時代によってそれほど変わらない人間の心理特性) を相手にしたかったのです。それを研究するのが, 実験心理学や行動科学とよばれる分野です。
そのため, 「かわいい」についての実験心理学的・行動科学的研究を始めました。これまでの研究を評価しつつ, 新しいアプローチを試したかったのです。
3. 「かわいい」の二層モデルの誕生
「かわいい」は, 現在「kawaii」として, 国際的にも通用するようになっています。たとえば, 「かわいい」のシンボルとも言われるハローキティーは, 世界中で愛されています (Wikipedia)。
そうだとすると, 「かわいい」の根底には, 日本という文化に限らない普遍性があるはずです。その一方で, なぜ, 「かわいい」の文化が, 他でもない日本で発展したかについても説明が必要です。
文献調査と質問紙調査に基づいて, 私は「かわいい」の二層モデルを提案しました (入戸野, 2009;文末の文献を参照) 。このモデルでは, 「かわいい」は, 第一に感情であり, そこには生物学的な基盤があると考えます。「かわいい」の基調には, 保護や見守りといった社会的動機に関連したポジティブ感情があり, それは幼児に対する愛情から派生していると提案しました。その根拠になるのが, 動物行動学者コンラート・ローレンツが1943年に提唱したベビースキーマ (Kindchenschema) の存在です。人間の赤ちゃんだけでなく幼い動物に対しても, 私たちは自然と注意が向きます。また, そういった属性を持つ個体は, 周囲から攻撃されずに保護を受けやすくなるという利点があるといいます。
ベビースキーマのアイデアが提唱されてから60年以上立ちますが, 不思議なことに, ベビースキーマが周りの個体の行動に与える効果とその強さについては, まだ十分に研究されていません。少なくとも, 注意を引きつける効果があることは示されており, 私の研究室でもその効果を確認しています (発表準備中) 。その他の効果については, 現在検討を続けています。
「かわいい」の二層モデルでは, このような生物学的な基盤を仮定しつつ, それが日本文化の特徴によって増幅されたために, 日本において「かわいい」文化が発展したのだと考えます。
たとえば, 日本人は, 「甘え」とよばれる, 周囲からの容認や愛を期待する行動や欲求に敏感だといわれます (土居健郎「『甘え』の構造 」1971年, 「続『甘え』の構造 」2001年) 。この特性は, ベビースキーマで仮定される保護者 (強者) と被保護者 (弱者) の単純な関係を, より複雑・重層的にすることに貢献したかもしれません。また, 日本の文化には, 「縮み志向」が伝統的に存在するといわれます (「李御寧「『縮み』志向の日本人 」1982年) 。これは, 手のひらで触れられるような小さい物に対して愛着をもつ傾向をさしますが, 「かわいい」の対象を生物から無生物に拡張するのに役立ったかもしれません。
「かわいい」の二層モデルから次のことが言えます。日本文化の特異性によって発展したとしても, 「かわいい」は第一に感情なので, 日本に限らず通文化的な普遍性を持ちうるということです。日本製のアニメやキャラクターは, その感情を媒介するモノとして機能しているのです。
このモデルは実証的に検討できるという点で, 過去の「かわいい」についての言説とは違います。少なくとも, 感情としての「かわいい」については実験によって調べていくことができます。
4. なぜ「かわいい」が大切か?
そうはいっても, 「かわいい」は, しょせん少女文化 (girlish culture) の域を出ず, 一部の人たちの嗜好品にすぎないという見方もあります。また, その一部の人たちを対象として, 新しいビジネスを考える人もいるでしょう。
そのような発想も理解できます。でも, 私自身は, 「かわいい」は, 一時の流行ではなく, 人間の持つある本質を示していると考えています。
私たちの身の回りにこれだけたくさんのかわいいものが存在し, さらに生産が続くのには, 理由があるはずです。行動科学の基本法則は, ある行動は強化されないかぎり (いいことがなければ) 続かないということです。
その仕組みを明らかにすることは, 私たちの日常生活における心理活動を理解することにつながります。また, かわいいものは, 他の種類の視覚刺激に比べて, 見るものの感情や行動に与える効果がとても強いという気がします。この観察をさらに確実なものにすることで, 産業・工学への応用が可能になるはずです。
なによりも, 「かわいい」の本場である日本の研究者こそ, このテーマを追求できる特権と責任があると考えています (ちょっとおおげさですが) 。
5. 今後の研究計画
このサイトの他のページをみていただくと分かるように, 私の専門は認知心理生理学です。人間の心理活動を, 主観-行動-生理という3つの側面から多角的に捉える手法を活かして, 以下のテーマに取り組んでいます。
- かわいいものに接しているときの脳波や自律神経系活動の測定
- かわいいものに接することによって生じるその後の行動変化
- 「かわいい」という感情と他のポジティブ感情との違い
- かわいいと感じる対象の範囲やかわいいものに対する態度や行動の個人差・文化差
2009年4月から2010年3月までは, 財団法人放送文化基金の助成を受けて研究を進めてきました [報告書 (PDF 393KB)]。
2011年4月から2014年3月までは, 科学研究費補助金 (“かわいい”感情の機能に関する行動科学的研究, 基盤研究(B)23330217) によって研究を進めました。
2017年4月から2020年3月までは, 科学研究費補助金 (かわいいと感じることが心理生理状態と社会的関係に与える効果, 基盤研究(B)17H02651) によって,さらに成果を発展させる予定です。
関心がある方は共同研究のご相談にものります。
6. おわりに
以上, 「かわいい」に対する私の取り組みについて, 簡単に紹介してきました。詳しくは, 次の論文をご覧ください。現在はまた少し考えが変わっています。
入戸野 宏 (2009). “かわいい”に対する行動科学的アプローチ 広島大学大学院総合科学研究科紀要 I 人間科学研究, 4, 19-35. [機関リポジトリ]
Nittono, H. (2010). A behavioral science framework for understanding kawaii. Proceedings of the Third International Workshop on Kansei (Fukuoka, 2010.2.22-23). pp. 80-83. [機関リポジトリ] (上の論文の短縮版)
※上記論文の引用文献リストで Lorenz (1943)の論文のページ数が間違っていました (誤: pp. 233-409, 正: pp. 235-409) 。お詫びして訂正します。2012.7.26追加
これまでの集大成となる論文がアクセプトされました。2015.1.18追加
Nittono, H. (2016). The two-layer model of “kawaii”: A behavioural science framework for understanding kawaii and cuteness (“かわいい”の二層モデル:かわいいとcutenessを理解するための行動科学的枠組み). East Asian Journal of Popular Culture, 2(1), 79-95. doi:10.1386/eapc.2.1.79_1
※無料で読めるオープンアクセスです。
リンク先の「Download Article」からどうぞ。
※無料で読めるオープンアクセスです。リンク先の「Download Article」からどうぞ。
この論文では,「かわいい」をベビースキーマに対する反応にとどまらず,さまざまな刺激属性の認知によって生じる感情として捉え,狭義のcutenessとの違いを明示しました。
入戸野 宏 (2016). “かわいい”感情の心理学モデル 情報処理(情報処理学会誌), 57(2), 128-131. [PDF]
※上記の英語論文の簡略版です。
7. 論文・学会発表・講演など
【2014.12.10】 「かわいい」の科学4 応用脳科学アカデミー
【2014.11.29】 広島大学同窓会関東支部総会で「“かわいい”の科学-新たな可能性を日本から発信する」という講演をしました(品川)
【2014.2.5】 「かわいい」の科学3 応用脳科学アカデミー
【2014.1.31】「かわいい」-人をつなげるポジティブ感情- 第31回コロイド・界面技術シンポジウム 日本化学会
【2013.12.10】「かわいい」の心理学:産業・工学応用の視点から ひろしま医工連携・先進医療イノベーション拠点 拠点設備・機器の有効活用に向けたセミナー (広島大学霞キャンパス広仁会館)
【2013.8.31】 なぜ「かわいい」を研究するか?−戦略としてのテーマ選び− 脳科学若手の会 (東京大学)
【2013.8.30】 Kawaii as an Emotion: A Theoretical Framework of Kawaii Design. In Panel Discussion 4 “Kawaii as an aesthetic for product and system design,” Proceedings of 5th IASDR 2013 TOKYO, 01-PD4-3, pp. 16-19. (芝浦工業大学) [別刷PDFはこちらから請求できます]
【2013.4.23】 「かわいい」の心理・行動科学 広島夕学講座 (広島市・広島商工会議所) [報告]
【2013.3.30】 「かわいい」研究のこれから 日本感性工学会かわいい人工物研究部会シンポジウム特別講演 (新潟市朱鷺メッセ) 資料集 pp. 30-32.
【2013.3.8】 “かわいい”感情に関する最近の知見 武庫川女子大学 生活美学研究所 情報美学研究会 講演報告 入戸野 宏 (2013). ”かわいい”感情に関する最近の知見 武庫川女子大学生活美学研究所紀要, 23, 93-100. (2013年11月)
【2013.2.5】 「かわいい」の科学2 応用脳科学アカデミー
【2013.1.25】 かわいさと幼さ:ベビースキーマをめぐる批判的考察 日本視覚学会2013年冬季大会シンポジウム「かわいさの視覚科学」解説記事 入戸野 宏 (2013). かわいさと幼さ:ベビースキーマをめぐる批判的考察 VISION, 25(2), 100-104. [機関リポジトリ]
【2012.11.7】 “かわいい”の心理学 企業内セミナ
【2012.6.12】 “かわいい”の認知行動科学 玉川大学研究所若手の会談話会 [談話会報告]
【2012.6.2】 かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察 日本感性工学会「かわいい人工物」研究部会2周年記念シンポジウム (芝浦工業大学豊洲キャンパス)
【2012.3.10】 “かわいい”感情の機能に関する行動科学的研究 大阪電気通信大学情報学研究施設(ii) こころ情報学研究会 大阪電気通信大学寝屋川キャンパス
【2012.3.9】 “かわいい”感情とそれに伴う行動の変化 第23回日本発達心理学会大会シンポジウム「『赤ちゃん』に対する養育行動の背景に迫る」 名古屋国際会議場
【2012.2.27】 「かわいい」の科学 応用脳科学アカデミー
【2011.12.2】 「かわいい」を解明する:心理学と行動科学からわかること 企業内セミナ
入戸野 宏 (2011). 行動科学的アプローチによるかわいい人工物の研究 感性工学, 10(2), 91-95. [ネットに掲載できないので, こちらから別刷PDFを請求してください]
第12回日本感性工学会大会 2010.9.11 「かわいい人工物」研究部会 企画セッション「かわいい人工物研究に対する行動科学の貢献」 (予稿集 PDF 450KB) 2010.7.8追加
財団法人放送文化基金平成20年度助成【技術開発】「映像コンテンツの“かわいさ”に基づく注意・感情誘導技術の開発」 [報告書 (PDF 393KB)] 2010.7.1追加
井原なみは・入戸野 宏 (2011). 幼さの程度による”かわいい”のカテゴリ分類 広島大学大学院総合科学研究科紀要 I 人間科学研究, 6, 13-18. [機関リポジトリ] 2012.9.25追加
Nittono, H., Fukushima, M., Yano, A., & Moriya, H. (2012). The power of kawaii: Viewing cute images promotes a careful behavior and narrows attentional focus. PLoS ONE, 7(9), e46362. 2012.9.27追加
井原なみは・入戸野 宏 (2012). 対象の異なる“かわいい”感情に共通する心理的要因 広島大学大学院総合科学研究科紀要 I 人間科学研究, 7, 37-42. [機関リポジトリ] 2013.3.1追加
Komori, M., & Nittono, H. (2013). Influence of age-independent facial traits on adult judgments of cuteness and infantility of a child’s face (年齢と独立した顔特徴が幼児顔のかわいさと幼さの判断に及ぼす効果). Procedia – Social and Behavioral Sciences, 97(6), 285-291. doi:10.1016/j.sbspro.2013.10.235(2013年11月) (Proceedings of ICCS 2013, The 9th International Conference on Cognitive Science, 2013.8.30; Kuching, Sarawak, Malaysia).
金井嘉宏・入戸野 宏 (2015). 共感性と親和動機による”かわいい”感情の予測モデル構築 パーソナリティ研究, 23(3), 131-141. doi:10.2132/personality.23.131 (2015年4月)
8. 関連リンク
日本建築学会「可愛い」を求める心と空間のあり方に関する研究WG
主催されている宇治川正人先生にインタビューしていただきました(2014年11月27日)。記事は「けい・きゅーぶ」2015年冬号に掲載されています(PDF)
長岡技術科学大学の取り組みです。おシャレでカワイイ実験や,ものづくりなどを通して堅苦しい理科のイメージを変えていくことを目指しておられます。
アメリカ人が考える cute な車のイメージ。
2014年から2017年まで総合アドバイザーを務めました。2018年から「暮らしにいいモノプロジェクト」にリニューアルしました。