Cognitive Psychophysiology Laboratory, Osaka University, Japan --- Contribute to Society by Psychology

Kawaii

「かわいい」の心理学
(2010年4月6日作成, 最終更新日:2017年4月21日)

新着情報

  • ベビースキーマに関連するかわいい写真と関連しないかわいい写真に対する心理生理反応の違いを調べた論文が SAGE Open にアクセプトされました(2017年4月19日)。
  • 夢ナビライブの講義が【オンライン】で視聴できるようになりました(2016年9月20日)。
  • NHK BSプレミアム「仮説コレクターZ」で「かわいい」の研究を取り上げていただきました。(2015年8月27日)
  • NHK Eテレ『サイエンスZERO』 で「かわいい」の研究が紹介されました。(2015年5月24日夜11:30~12:00,再放送 2015年5月30日昼12:30~13:00)
  • "カワいいもの"についてのインタビューがNHK広島の「お好みワイドひろしま」で放映されました(2014年11月18日)。
  • フィンランドの新聞に「毛のある動物はなぜかわいいか」というインタビューが掲載されました (2014年9月26日)。
  • 産経新聞の記事「動物テーマ 写真集人気」にコメントが掲載されました (2014年9月3日)。
  • 「"カワいいモノ"ブランドデザイン戦略事業」(中国経済産業局)の一環として,中国地方4県で講演をします(島根7月8日,岡山7月15日,広島7月23日,鳥取7月29日)。詳しくはこちら。(2014年6月30日)
  • 日経MJ (流通新聞) の記事「尻尾巻くかわいさ:無防備な動物のおしり」にコメントが掲載されました (2014年6月23日)。
  • PLoS ONE論文の裏話がオンラインジャーナル誌(The Winnower)に掲載されました (2014年5月27日)。
  • 広島大学のセミナー で『「かわいい」の心理学:産業・工学応用の視点から』という講演をしました(2013年12月10日)。
  • NHK総合テレビ「サキどり↑」で取り上げられました(2013年11月10日)。
  • FMラジオ局 J-WAVE「ラジペディア」でインタビューが放送されました (2013年10月24日)
  • VISION誌への寄稿「かわいさと幼さ : ベビースキーマをめぐる批判的考察」を機関リポジトリで公開しました (2013年5月21日)。
  • 広島大学ホームページ『研究NOW』で紹介されました。
  • PLoS ONE論文 (2012年9月26日公開) は70以上の海外メディアで紹介されました (Media Coverage) 。
  • 過去の情報
      • 2200万の文献を含む医学・生命科学系データベース PubMed で, 「かわいい (kawaii) 」をタイトルに含む最初の論文になりました。

1. 「かわいい」とは何だろう?

ふだんの生活の中で, 「かわいい」という言葉をよく耳にします。また, 私たちの身の回りには, かわいいものがあふれています。なぜでしょう?

「かわいい」について論じた書物は, これまでにも数多くあります。タイトルに「かわいい」を含むものだけでも, 以下のとおりです。

  • 美術手帳 「特集:かわいい」1996年2月号 (48巻, No. 720) 美術出版社

[刊行年順]

【補足1】ここに挙げた文献の刊行年を見て分かるのは, 「かわいい」に対する関心は周期的に高まるということです。このごろ「かわいい」が流行っていますが (外務省のポップカルチャー発信使 (2009年2月26日-2010年3月31日) やNHKの番組(2013年3月23日最終回), それは目新しいものでありません。直近では, 1990年代前半に盛んに議論されていたことが分かります。

このほかに, 関連する文化論や雑誌記事をあわせると相当な数になります。私が見つけた文献は, 文末に示した論文に載せました。他にあれば, ぜひこちらから教えてください。

しかし, これらの本を読んでも, 結局のところ「かわいい」とは何なのか, よく分かりませんでした。

「『カワイイ』にはもはや定義は要らない」 (櫻井, 2009, p. 185) とまでいわれると, どうも納得がいきません。ビジネスとしてはそれでいいのかもしれませんが, 学問としてはうまくいきません。

【補足2】なぜ, 「かわいさ」ではなく, 「かわいい」の研究なのかというと, 後述するように, 「かわいい」は, 感情を表わす形容詞として考えた方が, 語史の上でも現代用法の上でも, 合理的だからです。「かわいさ」というと, そういったものがどこかに実在するような感じがしますが, おそらく違います。同じものを見ても, かわいいと思うときも思わないときもあります。「かわいい」という語が, 対象の性質を表わす属性形容詞として使われるようになったのは, 近世以降です。これに対して, 「かわいい」の英語版としてよく使われる cute は, acuteの頭音消失異形であり, 属性形容詞が元になっているようです。このあたりに, かわいいと cute のニュアンスの違いがあるのかもしれません。

2. どうしたら「かわいい」を理解できるのか?

「なぜ分かった気がしないか」

文献を読んでいくうちに, その原因が何となく分かりました。私の思考スタイルが, これらの本の構成と少し違っていたようなのです。

まず, これまでの著書では, たいてい文化論が語られるか, 質的・感性的な表現が多用されていました。実証的なデータ (少なくとも, 読者が手続きや結果を再現できそうなデータ) はほとんど見かけません。また, 概して先行研究の調査が不十分であり, 記載したアイデアのどこが新しいのかをはっきり示していません。このような特徴は, 科学の営みに慣れていた私にはもの足りないものでした。

私はファッションや若者文化に疎く, それほど関心もありません。ファッションは時代や集団によって変化します。私としては, そのような「動く標的」ではなく, もっと手堅いもの (時代によってそれほど変わらない人間の心理特性) を相手にしたかったのです。それを研究するのが, 実験心理学や行動科学とよばれる分野です。

そのため, 「かわいい」についての実験心理学的・行動科学的研究を始めました。これまでの研究を評価しつつ, 新しいアプローチを試したかったのです。

3. 「かわいい」の二層モデルの誕生

「かわいい」は, 現在「kawaii」として, 国際的にも通用するようになっています。たとえば, 「かわいい」のシンボルとも言われるハローキティーは, 世界中で愛されています (Wikipedia)。

そうだとすると, 「かわいい」の根底には, 日本という文化に限らない普遍性があるはずです。その一方で, なぜ, 「かわいい」の文化が, 他でもない日本で発展したかについても説明が必要です。

文献調査と質問紙調査に基づいて, 私は「かわいい」の二層モデルを提案しました (入戸野, 2009;文末の文献を参照) 。このモデルでは, 「かわいい」は, 第一に感情であり, そこには生物学的な基盤があると考えます。「かわいい」の基調には, 保護や見守りといった社会的動機に関連したポジティブ感情があり, それは幼児に対する愛情から派生していると提案しました。その根拠になるのが, 動物行動学者コンラット・ローレンツが1943年に提唱したベビースキーマ (Kindchenschema) の存在です。人間の赤ちゃんだけでなく幼い動物に対しても, 私たちは自然と注意が向きます。また, そういった属性を持つ個体は, 周囲から攻撃されずに保護を受けやすくなるという利点があるといいます。

ベビースキーマのアイデアが提唱されてから60年以上立ちますが, 不思議なことに, ベビースキーマが周りの個体の行動に与える効果とその強さについては, まだ十分に研究されていません。少なくとも, 注意を引きつける効果があることは示されており, 私の研究室でもその効果を確認しています (発表準備中) 。その他の効果については, 現在検討を続けています。

「かわいい」の二層モデルでは, このような生物学的な基盤を仮定しつつ, それが日本文化の特徴によって増幅されたために, 日本において「かわいい」文化が発展したのだと考えます。

たとえば, 日本人は, 「甘え」とよばれる, 周囲からの容認や愛を期待する行動や欲求に敏感だといわれます (土居健郎「『甘え』の構造 」1971年, 「続『甘え』の構造 」2001年) 。この特性は, ベビースキーマで仮定される保護者 (強者) と被保護者 (弱者) の単純な関係を, より複雑・重層的にすることに貢献したかもしれません。また, 日本の文化には, 「縮み志向」が伝統的に存在するといわれます (「李御寧「『縮み』志向の日本人 」1982年) 。これは, 手のひらで触れられるような小さい物に対して愛着をもつ傾向をさしますが, 「かわいい」の対象を生物から無生物に拡張するのに役立ったかもしれません。

「かわいい」の二層モデルから次のことが言えます。日本文化の特異性によって発展したとしても, 「かわいい」は第一に感情なので, 日本に限らず通文化的な普遍性を持ちうるということです。日本製のアニメやキャラクターは, その感情を媒介するモノとして機能しているのです。

このモデルは実証的に検討できるという点で, 過去の「かわいい」についての言説とは違います。少なくとも, 感情としての「かわいい」については実験によって調べていくことができます。

4. なぜ「かわいい」が大切か?

そうはいっても, 「かわいい」は, しょせん少女文化 (girlish culture) の域を出ず, 一部の人たちの嗜好品にすぎないという見方もあります。また, その一部の人たちを対象として, 新しいビジネスを考える人もいるでしょう。

そのような発想も理解できます。でも, 私自身は, 「かわいい」は, 一時の流行ではなく, 人間の持つある本質を示していると考えています。

私たちの身の回りにこれだけたくさんのかわいいものが存在し, さらに生産が続くのには, 理由があるはずです。行動科学の基本法則は, ある行動は強化されないかぎり (いいことがなければ) 続かないということです。

その仕組みを明らかにすることは, 私たちの日常生活における心理活動を理解することにつながります。また, かわいいものは, 他の種類の視覚刺激に比べて, 見るものの感情や行動に与える効果がとても強いという気がします。この観察をさらに確実なものにすることで, 産業・工学への応用が可能になるはずです。

なによりも, 「かわいい」の本場である日本の研究者こそ, このテーマを追求できる特権と責任があると考えています (ちょっとおおげさですが) 。

5. 今後の研究計画

このサイトの他のページをみていただくと分かるように, 私の専門は認知心理生理学です。人間の心理活動を, 主観-行動-生理という3つの側面から多角的に捉える手法を活かして, 以下のテーマに取り組んでいます。

  • かわいいものに接しているときの脳波や自律神経系活動の測定
  • かわいいものに接することによって生じるその後の行動変化
  • 「かわいい」という感情と他のポジティブ感情との違い
  • かわいいと感じる対象の範囲やかわいいものに対する態度や行動の個人差・文化差

2009年4月から2010年3月までは, 財団法人放送文化基金の助成を受けて研究を進めてきました [報告書 (PDF 393KB)]。

2011年4月から2014年3月までは, 科学研究費補助金 (“かわいい”感情の機能に関する行動科学的研究, 基盤研究(B)23330217) によって, さらに成果を発展させる予定です。

関心がある方は共同研究のご相談にものります。

6. おわりに

以上, 「かわいい」に対する私の取り組みについて, 簡単に紹介してきました。詳しくは, 次の論文をご覧ください。現在はまた少し考えが変わっています。

入戸野 宏 (2009). “かわいい”に対する行動科学的アプローチ 広島大学大学院総合科学研究科紀要 I 人間科学研究, 4, 19-35. [機関リポジトリ]

Nittono, H. (2010). A behavioral science framework for understanding kawaii. Proceedings of the Third International Workshop on Kansei (Fukuoka, 2010.2.22-23). pp. 80-83. [機関リポジトリ]  (上の論文の短縮版)

※上記論文の引用文献リストで Lorenz (1943)の論文のページ数が間違っていました (誤: pp. 233-409, 正: pp. 235-409) 。お詫びして訂正します。2012.7.26追加

これまでの集大成となる論文がアクセプトされました。2015.1.18追加

Nittono, H. (2016). The two-layer model of "kawaii": A behavioural science framework for understanding kawaii and cuteness ("かわいい"の二層モデル:かわいいとcutenessを理解するための行動科学的枠組み). East Asian Journal of Popular Culture, 2(1), 79-95. doi:10.1386/eapc.2.1.79_1

※無料で読めるオープンアクセスです。リンク先の「Download Article」からどうぞ。

感情としてのかわいい

この論文では,「かわいい」をベビースキーマに対する反応にとどまらず,さまざまな刺激属性の認知によって生じる感情として捉え,狭義のcutenessとの違いを明示しました。

7. 論文・学会発表・講演など

【2014.12.10】 「かわいい」の科学4  応用脳科学アカデミー [講師紹介]

【2014.11.29】 広島大学同窓会関東支部総会で「“かわいい”の科学-新たな可能性を日本から発信する」という講演をしました(品川)

【2014.2.5】 「かわいい」の科学3  応用脳科学アカデミー [講師紹介]

【2014.1.31】「かわいい」-人をつなげるポジティブ感情- 第31回コロイド・界面技術シンポジウム 日本化学会

【2013.12.10】「かわいい」の心理学:産業・工学応用の視点から ひろしま医工連携・先進医療イノベーション拠点 拠点設備・機器の有効活用に向けたセミナー (広島大学霞キャンパス広仁会館)

【2013.8.31】  なぜ「かわいい」を研究するか?−戦略としてのテーマ選び−  脳科学若手の会 (東京大学)

【2013.8.30】 Kawaii as an Emotion: A Theoretical Framework of Kawaii Design. In Panel Discussion 4 "Kawaii as an aesthetic for product and system design," Proceedings of 5th IASDR 2013 TOKYO, 01-PD4-3, pp. 16-19. (芝浦工業大学) [別刷PDFはこちらから請求できます]

【2013.4.23】 「かわいい」の心理・行動科学 広島夕学講座 (広島市・広島商工会議所) [報告]

【2013.3.30】 「かわいい」研究のこれから  日本感性工学会かわいい人工物研究部会シンポジウム特別講演 (新潟市朱鷺メッセ) 資料集 pp. 30-32.

【2013.3.8】 “かわいい”感情に関する最近の知見  武庫川女子大学 生活美学研究所 情報美学研究会 講演報告 入戸野 宏 (2013). ”かわいい”感情に関する最近の知見 武庫川女子大学生活美学研究所紀要, 23, 93-100. (2013年11月)

【2013.2.5】 「かわいい」の科学2  応用脳科学アカデミー [講師紹介]

【2013.1.25】 かわいさと幼さ:ベビースキーマをめぐる批判的考察 日本視覚学会2013年冬季大会シンポジウム「かわいさの視覚科学」解説記事 入戸野 宏 (2013). かわいさと幼さ:ベビースキーマをめぐる批判的考察 VISION, 25(2), 100-104. [機関リポジトリ]

【2012.11.7】 “かわいい”の心理学 企業内セミナ

【2012.6.12】 “かわいい”の認知行動科学 玉川大学研究所若手の会談話会 [談話会報告]

【2012.6.2】 かわいさと幼さの関係についての実験心理学的考察 日本感性工学会「かわいい人工物」研究部会2周年記念シンポジウム (芝浦工業大学豊洲キャンパス)

【2012.3.10】 “かわいい”感情の機能に関する行動科学的研究 大阪電気通信大学情報学研究施設(ii) こころ情報学研究会 大阪電気通信大学寝屋川キャンパス

【2012.3.9】  “かわいい”感情とそれに伴う行動の変化 第23回日本発達心理学会大会シンポジウム「『赤ちゃん』に対する養育行動の背景に迫る」 名古屋国際会議場

【2012.2.27】  「かわいい」の科学 応用脳科学アカデミー

【2011.12.2】 「かわいい」を解明する:心理学と行動科学からわかること 企業内セミナ

入戸野 宏 (2011). 行動科学的アプローチによるかわいい人工物の研究 感性工学, 10(2), 91-95. [ネットに掲載できないので, こちらから別刷PDFを請求してください]

第12回日本感性工学会大会 2010.9.11 「かわいい人工物」研究部会 企画セッション「かわいい人工物研究に対する行動科学の貢献」 (予稿集 PDF 450KB) 2010.7.8追加

財団法人放送文化基金平成20年度助成【技術開発】「映像コンテンツの“かわいさ”に基づく注意・感情誘導技術の開発」 [報告書 (PDF 393KB)] 2010.7.1追加

井原なみは・入戸野 宏 (2011). 幼さの程度による"かわいい"のカテゴリ分類 広島大学大学院総合科学研究科紀要 I 人間科学研究, 6, 13-18. [機関リポジトリ] 2012.9.25追加

Nittono, H., Fukushima, M., Yano, A., & Moriya, H. (2012). The power of kawaii: Viewing cute images promotes a careful behavior and narrows attentional focus. PLoS ONE, 7(9), e46362. 2012.9.27追加

井原なみは・入戸野 宏 (2012). 対象の異なる“かわいい”感情に共通する心理的要因 広島大学大学院総合科学研究科紀要 I 人間科学研究, 7, 37-42. [機関リポジトリ] 2013.3.1追加

Komori, M., & Nittono, H. (2013). Influence of age-independent facial traits on adult judgments of cuteness and infantility of a child’s face (年齢と独立した顔特徴が幼児顔のかわいさと幼さの判断に及ぼす効果). Procedia - Social and Behavioral Sciences, 97(6), 285-291. doi:10.1016/j.sbspro.2013.10.235(2013年11月) (Proceedings of ICCS 2013, The 9th International Conference on Cognitive Science, 2013.8.30; Kuching, Sarawak, Malaysia).

金井嘉宏・入戸野 宏 (2015). 共感性と親和動機による"かわいい"感情の予測モデル構築 パーソナリティ研究, 23(3), 131-141. doi:10.2132/personality.23.131 (2015年4月)

8. 関連リンク

日本建築学会「可愛い」を求める心と空間のあり方に関する研究WG

主催されている宇治川正人先生にインタビューしていただきました(2014年11月27日)。記事は「けい・きゅーぶ」2015年冬号に掲載されています(PDF)

Kawaii理科プロジェクト

長岡技術科学大学工学部機械系の吉武裕美子先生が中心となり,おシャレでカワイイ実験や,ものづくりなどを通して堅苦しい理科のイメージを変えていくことを目指しておられます。

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